「納棺尊号」を書くには
故人に法名が定まっている必要がある。
法名は
他宗の戒名に相当するものであるが、
その意義は大きく異なっている。
戒名というのは、
仏教の戒律を授かった者に与えられる名前で、
僧名に準じるものである。
本来は授戒会に参加して授かるものなのだが、
ほとんどの人はその機会をもたずに生涯を終えてしまう。
生前に受戒をしていれば、
僧に準じた形で葬儀を行なうことができるのだが、
そうでない場合は葬儀に入る前に
故人に戒律を授けて僧に擬さなければならない。
これを没後作僧という。
この儀礼を経て故人は戒名を得ることになる。
しかし、
浄土真宗では宗祖親鴬が非僧非俗を標傍したため、
戒律を保って修行する者という意味での僧は存在せず、
授戒儀礼も行なわれない。
それゆえ戒名も用いられない。
その代わりに浄土真宗の正式な門徒の証として与えられるのが法名で、
本山での帰敬式(「おかみそり」ともいう)を
受式して授けられる。
法名は「釈○○」という形式でつけられ、
居士・大姉・信士・信女といった
位号(戒名の下につく文字)はつけない。
頭についている「釈」は
釈迦の弟子という意味である。
故人がすでに法名を授かっているのなら、
そのまま葬儀で用いればよいのだが、
授かっていない場合は、
出棺勤行までに帰敬式を行なって
故人に法名を授けなければならな帰敬式では、
導師が仏と仏法と僧(三宝)に帰依することを示す
「三帰依文」を唱えながら
カミソリを頭に三度あてがう。
これは幼いころの親鴬が
得度(僧侶になるための出家の儀式)したことになぞらえたもので、
頭を剃ったことを表わしている。
続いて「其仏本願力」の偶が唱えられる。
ちなみに、
浄土真宗では位牌を使わないのが
本来の姿であるという。
実際には白木位牌が葬儀に使われるが、
これは法名を記しておくものが他にないため、
便宜的に用いているのだとされる。
大阪市立北斎場TOPへもどる